ジョミー・マーキス・シン

ナスカは凶星だった

ジョミーがナスカをひと時の安住の地として選んだのは、「閉じ込められた皆の心を解き放ち」、「人間への憎しみだけで一杯の心にもっと温かい思いをしてほしかった」という理由からでした。

地球とは似ても似つかぬ、二つの太陽と赤い大地の星、ナスカ…

ソルジャー・ブルーの遺志を大切に思いながらも、仲間たちのために最善と考えて、苦悩の末に一旦ナスカに降りることを決意したジョミーに対し、ミュウ達は、それぞれに主張や要望をしてきます。

ジョミーを支えるべき立場であり、何百歳も年長の長老たちまで…

人間への憎しみに囚われている長老たちは、多くのミュウが地球へ向かうことを断念しナスカへの永住を希望するようになったことをジョミーの責任と考え、「みなおまえの独断が…!」と、ジョミーに精神攻撃をかけてしまいます。

小学生の時には、「長老たちひどいなあ…一番悩み苦しんでいるのはジョミーなのに(T_T)ジョミーよりずっと年上なんだから、もうちょっと分別があってもいいんじゃない?」と思っていました。

この場面もそうですが、初めてジョミーがミュウの船に行き、「おまえたちのような化け物といっしょにされるくらいなら…」と発言して若いミュウたちを怒らせた時にも、手ひどい精神攻撃をくらっています。

地球へ…の原作では、ミュウはとても感情的で、キースの言葉どおり「すぐカッとなり、怒ったり泣いたり同情したり、そのくせいざとなると闘争心がない」ように描かれています。

TVアニメでは、ミュウたちはもっと立派で理性的で自制心があり、「危険な力を振り回す化け物ではない」ことになっていました。

この設定により何となく、ミュウ=正義、人間=悪という図式ができてしまって、戦争に良いも悪いも無い、戦争において正義VS悪という単純な図式は成り立たないという、原作のメッセージが希薄になってしまいました。

ミュウと人間双方が多くの欠点を持ち、なおかつ各々の価値観でより良い世界を実現しようと模索する存在であればこそ、両者の戦いに悲壮感が漂うのであり、それを単純化してしまうと、深みがなくなってしまいます。

長老たちがナスカを凶星と考え、ジョミーに責任を押し付け、精神攻撃までしてしまうのは、とても人間くさく、自然な展開だと思うのです。