ジョミー・マーキス・シン

ナスカの子

ジョミーはナスカで、SD体制以降初の「本当の人類」を誕生させました。
お母さんの胎内で育った自然出産児、トォニィたちナスカの子です。

地球へ…第一部の中で、教授が「幸運だな君たちは…ユニヴァーサルの教育を知らずESPエリートとしてここで生まれ育ったとは…」と言っているので、それ以前からミュウたちは自分達の子孫を増やしてはいたのでしょう。

SD体制下の人間と同じ、婚姻によらない人工授精と、人工子宮による方法で…
ジョミーが医師の一人と話をしている場面で、研究室に並ぶたくさんの試験管が描かれていましたし。

ナスカの子たち9人は、人間本来の方法で生まれた「本当の人類」であるだけではなく、「優しく弱く闘いを好まぬミュウに代わって闘えるものを求めていた」ジョミーの意思から生まれて来たので、特別な力を持っていたのですよね。

その力ゆえに、ミュウと言う異端者の集団の中にあって更に、異質な者たちであるナスカの子たち…
竹宮恵子さんはナスカの子たちに、随分と過酷な運命を課したものだと思います。

ナスカの子たちは、自分たちに地球へ向かう意味があるのか、地球へ着いたとしても自分たちに生きる場所はあるのかと悩みます。

ジョミーの「運命に対する悔しさを超えていられる」強さは、結局そんなナスカの子たちを、究極の異端者としての運命をも受け入れ、ミュウの悲願である地球へ向かうために全力を尽くすよう導きます。

ジョミーがアタラクシアに、テレパシーで送った「人間たちに恨みはない それぞれに生きそれぞれに歩いてきたのだ ともに地球を愛し憧れ-だからこそ戦う地球への道を!」というメッセージは、何度読んでも感涙ものです。

ジョミーは、排除され、虐げられた怒りや恨みなど個人的な感情を超越した存在、生きる意義を追い求め、人間とミュウの双方に対して(読者に対しても)、人間とは何かという疑問を突きつける存在であり、すでに一個の人間のレベルを超越してしまっているのですよね。

地球へ…のテーマを体現しているのがジョミーなのだと思います。
ジョミーの運命を受け入れ抗わず、その中で精一杯力を尽くす姿を見て、ナスカの子たちは地球へ向かう意義を見出すのですから。