トォニィはジョミーのことを慕いながらも、自分と同じ「超人類」であるジョミーが、人間やミュウのために心を悩ますのが分からないと言い、「少し特別すぎる」とリオに嫌われたりしています。
トォニィはジョミーの意思により「強く生まれて来た」のですから、いわばジョミーの分身でもあったと思います。
そんなトォニィが、人類やミュウよりも進化した自分たち超人類だけで、「自由の天地へ行かないか」とジョミーを誘惑するのは、ジョミーの心の暗部を投影したのがトォニィの欠点だからではないでしょうか。
自分は優れたものであり、自分より劣ったものに奉仕することで一生を終えるのは嫌だと言う割り切った考えは、ジョミーの心の中にも全くない訳ではなく、ミュウの長としての責務を果たすため、常日頃自重している考え方だったのだと思います。
それをあっけらかんと口にしてしまう幼い頃のトォニィは、悪気はないのですが、優れたものが陥りがちな傲慢さに満ちています。
ジョミーはその気になればミュウや人類なんて助けていないで、新たな自由の天地を探しに行っても良かったのですよね。でもそれをしなかったジョミーの生き方が、私を感動させてくれました。
ジョミーには自分自身の存在そのものよりも、この世界の中でどのように生きるのかということの方が重要なのです。
物語の終盤ではトォニィも、人間でもミュウでもないジョミーの、地球を思う懐かしい心のために命を捧げると言っています。
トォニィはこの時点ですでに、人間、ミュウ、超人類などという枠を超えて、ジョミーと同じ、生きる意味を探求する存在になっているのですよね。
ジョミーの中の迷いや矛盾が解消したので、トォニィも成長したのかと考えました。
心理学に、一人の人間の中に存在する複数の人格を分解して見せたものが、物語の登場人物だという考え方があると聞きました。
竹宮恵子さんは大学で教育学を専攻されたそうですから、その辺りを意識して物語を作っているので、地球へ…の登場人物たちがそれぞれに身近に、真実味をもって感じられるのだろうと思います。